蝶戦車 名作選
森下 こうして権兵衛は、打ち首獄門になりましたとさ。めでたし、めでたし。
南城 えー、それってめでたいの〜?
森下 そうかな?
南城 えっと…、「何かが引っ掛かる」って言うんだっけ?
川道 おっ、幹男は随分難しい言葉知ってるな〜。
森下 賢いわね〜!
じゃあ幹男ちゃんは賢いんだから、もう寝ましょうね。
南城 えー!?もっと絵本読んでよ〜!
川道 そうか、じゃあ今日、面白そうな本を見つけてきたんだ。
「本当は怖い日本昔話」って本。
森下 そういえば昔、本当は怖いグリム童話とかって流行ってたわね。
何だかパクリ臭がプンプンするんだけど?
南城 それでいい、それでいい!何でもいいから読んで〜!
川道 ハハハ、意外と幹男には理解出来ちゃったりしてな。
じゃあ、最初から読んでいくぞ。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は欲の無い生活を送っており、おじいさんは
「金が無くとも、わしはばあさんが居れば、それで幸せじゃ」というのが口癖でした。
南城 うん、それでそれで?
川道 ある日、おじいさんが山で死んだばっかりに、
      (おじいさんは山へ柴刈りに)
おばあさんは変わって、贅沢に生きました。
(おばあさんは川へ洗濯に行きました)
森下 保険金殺人の臭いがするわ!

森下 なかなか暑さが終わらないなぁ…。
南城 海とか行ったのか?
森下 「お盆休みって、食えるのか?」状態だったな。
南城 だよなぁ…、休みなんて、そう簡単に当たらないよな。
森下 ましてや契約社員とバイトの掛けもちだから、寧ろ休んでいられないけど。
南城 そういえば同級生の田中、マイホーム建てたんだってよ。
森下 いいよなぁ…、自分の城を持てるってのは。
南城 でもよ、田中が経営している会社って、いろいろ怪しい噂が立っているらしいけどな。
森下 今流行のブラック企業ってヤツか?
南城 う〜ん、その括りに入るのかどうかは分からないんだけど、従業員とかに対してはかなりケチなクセに、
田中自身や、田中に肩入れをしている人間は、そこそこ良い生活してるって話を、ちらっと聞いた事があってな。
森下 嫌なもんですなー。
本当にそんな事してたら、後ろから刺される可能性とかもあるんじゃないか?
南城 いや、いくらなんでも考え過ぎだろうよ。
で、今日の昼から、新築のマイホームでバーベキューやるから来ないかって電話が来たんだけど、
そんな暇無いからな。
森下 御大層な身分だなぁ、まぁ知ってても自分も行けなかったけどな。
南城 あぁ、でも川道は暇だから行くらしいぞ。
森下 田中の大盤振る舞いならば、行って損はしない事も無いんだろうけど。
南城 お、噂をしていたら。
川道 おお、どうした二人共。
森下 あれだろ?田中の新築マイホームのパーティーに行ってたんだろ?
川道 うん、冷やかし程度に様子を見に行ってきた。
南城 で、どうだった?田中ん家のバーベキューは?
川道 まぁ、凄い規模だったな、たくさん人が集まってたし。
念願のマイホーム、もう炎上してたよ。
           (を、エンジョイしてたよ。)
森下 いきなり火事かよ!
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