蝶戦車 名作選
川道 課長、今年の新入社員は何人増えたんですか?
森下 6人だったかな、ただうちの課は新入社員じゃなくて、転勤で1人加わるんだけどな。
川道 へぇ、そうなんですか!
森下 南城さんだったかな?まだ向こうで挨拶してるから、もうすぐこっちに来るだろう。
川道 いいですね、新入社員を雇えるって…。
森下 確か、川道君のお父さんは建築関係だったっけ?
川道 はい、ただ不況の煽りと、日本建築の支店が市内に出来たのが追い打ちになってまして、
結構厳しい状態になっていますね、契約していたパートさんも解雇したみたいですし…。
森下 そうなのか…、有名全国企業だからなぁ…。
でも、この厳しい環境だからこそ、お父さんには頑張って欲しいな。
大丈夫!お父さんが実直に仕事や営業をこなしていれば、強力なライバルにも勝つ事は出来るよ。
お父さんの行動力は、地元の人がちゃんと見てくれているから!
川道 はい、父にも伝えておきます!
森下 ほら、さっき話していた南城さんだ。
南城 初めまして、南城と言います。明日からはよろしくお願いします!
川道 川道です、よろしくお願いします!
森下 南城さんは東京から来られたんだよね、何やら急に話が決まったみたいだけど?
南城 はい、父が日本建築に勤務しているのですが、この近くにある支店の店長に命ぜられて、
一家全員で引っ越したかったので、会社が融通してくれました。
川道 ………。
森下 お父さんの事が好きなんだね。ん?今、日本建築って言った?
南城 え?はい、父が支店長になりまして…。
森下 そうか…、実は彼のお父さんも同業者らしくて…。
南城 え、という事は川道さんのお父様は?
川道 「コンチクショー」と怒鳴ってます…。
(建築業を営んでます)
森下 気まずい!

森下 殿、食事の用意が出来ました。
川道 うむ、ご苦労。
森下 本日は鮎の塩焼きでございます。
川道 ほう、そういえば以前にも塩焼きが出た記憶があるな。
森下 はい、あの時は塩が不足しておりました故、殿にはご満足頂けませんでした。
しかし、今回はご安心を。
川道 そうか、それは楽しみだな!
森下 (全く、あれだけ塩を付けたにも関わらず塩分が足りないと言われたからな
、これ以上は間違いなく病気になってしまう…。)
南城 殿!
川道 何だ、食事中だぞ!
南城 はっ、申し訳ございません!
ですが、先程城内にて不審者を捕らえましたので…。
森下 なんと、それはまことか!?
南城 しかもその者は、隣国の隠密と分かりましてございます。
森下 殿、その者はいかが致しましょうか?
このまま解き放てば、我が国に害が及ぶ事は必至でございます。
川道 塩気が無いだろう!
(処刑しか無いだろう。)
森下 味覚どうなってんねん!!

川道 幹子〜、もうちょっと小さく切って欲しかったなぁ〜。
南城 もう、元々不器用なんだから仕方ないでしょ!
森下 ただいま〜、あら周子ちゃん、いらっしゃい。
川道 お邪魔してます!
森下 どうしたんだい、二人で料理だなんて?
あ!まさか彼氏への手料理でも作ってあげてるのかな!?
なるほど、「彼」だけに、「カレー」なんだな!?
南城 面白くないわよ。違うよお父さん、周子がね、お兄さんやお友達に食べて欲しいんだって。
川道 味付けには自信があるんですけど、野菜を切るのが苦手で…。
南城 私だって野菜切るの苦手なのに〜!
森下 ははは、見栄えが悪くても立派な手料理には変わりないんだから。
素晴らしい事だと思うよ、自分で料理を作るっていうのは。
川道 ありがとうございます!
南城 ほら周子、後は味付けだけだよ。
川道 うん、ジャジャーン!特製エキス〜!!
森下 おぉ、所謂隠し味ってヤツだね。
醤油やらソースとかは聞いた事あるけど、何のエキスなんだろうね?
川道 よし、じゃあ幹子味見してみて!
南城 うん!さて、どうかなぁ…?
………ねぇ、何か未体験の味なんですけど???
森下 おじさんにも味見させて。
川道 幹子には分からないのよ、大人の味だからかな?
森下 どれどれ…?………うん、クセはあるけど、おじさんは好みかな〜。
川道 私もチェックしておかないとダメですね!
森下 自分で作ったエキスなら、最終確認は必要だね。
南城 ねぇ周子、それって何を入れたの?
川道 …オシッコの味は、マニアが喜ぶわ!
(…よし、この味だ!兄等は喜ぶわ!)
森下 俺、マニア確定じゃねぇか!!
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